キャリアアップ助成金で気を付けること
1.雇用区分の「名称」の完全一致
労働条件通知書の雇用区分名と、就業規則で定義されている名称が一言一句一致している必要があります。
NG例: 就業規則では「有期契約労働者」と定義しているのに、通知書では「契約社員」「パート」と記載している。
理由: 労働局は「この通知書の『契約社員』に該当する就業規則が存在しないため、就業規則が未整備である」とみなし、不支給の判断を下すリスクがあります。
2.「試用期間」の取り扱い
試用期間の記載は、転換前(有期)と転換後(正社員)で注意点が異なります。
転換後(正社員)の通知書に試用期間があるのは絶対NG
正社員に転換した後の通知書に「試用期間:○ヶ月」と記載してしまうと、「まだ正社員として身分が確定していない」とみなされ、助成金の対象外となるか、試用期間が終了するまで申請期間のカウントが始まりません。
転換前(有期・無期)の試用期間と就業規則の適用
有期契約期間中に試用期間を設けること自体は可能ですが、就業規則に「試用期間中の者には本規則(または退職金規程など)を適用しない」といった除外規定がある場合、その期間は助成金要件である「有期契約労働者としての雇用期間(6ヶ月〜)」にカウントされない恐れがあります。
3.「基本給」と「各種手当」の明確な記載(3%アップ要件の根拠)
助成金の最大のハードルである「賃金3%以上アップ」の根拠となるため、支給項目に曖昧な点があってはいけません。
固定残業代の区分: 「基本給〇〇円(固定残業代含む)」のような合算表記はNGです。「基本給〇〇円、固定残業代(○時間分として)〇〇円、超過分は別途支給」と明確に切り分けて記載する必要があります。
手当の名称一致: 就業規則(賃金規程)に記載のある手当(例:皆勤手当、家族手当)が、通知書に漏れなく記載されているか(または該当しない旨が明確か)が見られます。
4.正社員要件(賞与・退職金)の記載漏れ
キャリアアップ助成金における「正社員」の定義として、「賞与または退職金の制度があり、かつ適用されること」が求められます。
NG例: 就業規則には「正社員には賞与を支給する」とあるのに、転換後の通知書で賞与の項目が「なし」や空欄になっている。
曖昧な記載の回避: 「会社の業績により支給することがある」という記載だけでは、制度として確立していないとみなされる場合があります。就業規則の規定と完全にリンクさせ、「あり(就業規則第○条の通り)」とするのが安全です。
5.契約期間の「開始日」と「終了日」(期間の定めの有無)
転換前後の「有期」から「無期(正社員)」への変化が、日付で客観的に証明できなければなりません。
転換前(有期): 「令和○年○月○日 ~ 令和○年○月○日」と明確な期間があること。
更新上限の記載: 法改正により、有期契約労働者の通知書には「更新上限の有無とその内容(通算○年まで、など)」の記載が必須となりました。これが漏れていると労働基準法等の違反状態とみなされ、不支給要件に抵触する可能性があります。
転換後(正社員): 期間の定めが「なし」にチェックされており、かつ転換日が雇用開始日として明記されていること。
6.所定労働時間・休日の整合性
転換後の通知書に記載された1日の労働時間や年間休日数が、就業規則に定める「正社員」の規定と一致しているか確認されます。
NG例: 就業規則では正社員の所定労働時間を「1日8時間」としているのに、通知書では「1日7時間」となっている(この場合、正社員ではなく「短時間正社員」として別の就業規則や条文が必要になります)。
実務上の対策
これらの審査は年々厳格化しており、担当する審査官によっても解釈の揺れが生じることがあります。申請を行う際は、事前に労働局の担当窓口で「この就業規則の定義と、この労働条件通知書のフォーマットで要件を満たすか」を事前相談(確認)しておくことで、後からの致命的な手戻りを防ぐことができます。
